旅をする知

ソーシャルワーカーとして、旅をするように学ぶ。それは形を変えても生き続ける。

べてるの家見学

【憧れのべてるの家に行ってきた!】

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精神障害のある方々の共同生活や当事者研究ソーシャルワーカーの多くが憧れる、べてるの家
大学でも学んだし、行った人みんなにオススメされ、先日やっと行くことができました。
北海道浦河は遠いけど、6年越し?の夢が叶った。笑

たくさんの感動があり、超長文になりますが、読んでください。笑
その場で感じて学ぶことが多く、正直行かなきゃ分かんない空気感がほとんどですが…
想像以上に良かったため、訪問以降、心がほかほか、わくわく、満たされた感じがずっと続いている。

【べてるって何?】
今から30年以上前、ソーシャルワーカーが、精神科を利用する統合失調症等を抱えた当事者たちの症状が悪化し、何度も病院に戻ってくる姿を見て、なぜそれが起こり続けるのか分からないから一緒に暮らしてみようとなったことからはじまった。
教会で生活を共にし、昆布の産地直送などの起業を通じた、社会進出を目指すということで誕生した。
そこで暮らす当事者にとっては、
生活共同体、働く場としての共同体、ケアの共同体という3つの役割がある。

「三度の飯よりミーティング」を合い言葉に、月に100回以上もメンバー同士で集まり病気や共同生活の事について会議をしている。
特に「当事者研究」やSSTが盛ん。
自分の病気に自分で病名をつけ、毎日の経過を記録し、報告し合っている。

(実際の様子のわかるオススメ動画)
https://youtu.be/-mzCeqpZo5g

【べてるの良さとは?】
いっぱいあって書ききれないけど、とりあえず印象に強く残ったことだけでも!!
・「安心してサボれる職場である」
・「自らがしたいことを選択することが、障害と向き合う時に最も大切なこと」であり、「当事者の力」を信じ続けるところ
・「精神障害者の意思の尊重、プロセスを体験する支え」を徹底している
・風呂に入るなど、日常の自立の積み重ねからの就労ではなく、「やりたいことを実現するときに付随してくる日常生活の自立」という考え
・自分で気づくリアリティを大切にしている
・薬で落ち着けるだけだと、結局後からできないことがたくさんでてきて、同じことの繰り返しになる。そこで、「自分の言葉で自分の世界を語る力が必要」であり、そこに仲間がいるかどうかが重要であること。
・当事者と支援者ができるだけ対等であり、区別がつかない状態になっていたこと。

【朝のミーティングとは?】
自発性を大事にし、体調の報告と、退社時間も自己申告で決定できる場。
運営は、当事者が主体。
ファシリする人、記録を取る人など、様々な役割がある。

途中で思い通りにいかないことがあり、イライラすると感情コントロールが苦手な人も、自らそれに気づき、クールダウンを柔軟に取り入れていた。
圧倒的自己認知と自立したコントロールされていることが印象に残る。

当事者研究とは?】
お互いを励まし合うのが目的。
私にとっては本当に幸運なことに、この日は偶然にも向谷地生良さん(ソーシャルワーカー)がファシリをされた。
ホワイトボードで、問題や流れを絵や図で表現し、誰が見ても今の話の流れ分かるようにし、共通理解を促す。

流れとしては、はじめに共通のお約束確認や、自己管理記録の確認や進捗報告なども行い、当事者研究したいひとを募集して、1人ずつのテーマで行う。
でてきた自分の特性課題は、キャラの名前をつけられており、人と問題を切り離し客観的に理解されていた。
普段から、自分たちの症状を自分たちで記録し理解し、自分の助け方を考え続けている。みんなが自らを知り自らを語ることを大切にしている。

ファシリの基本は利用者さんたちで解決できるように、問いを投げかける。
同じ経験者はいないかと、ピアサポートにもっていく。
周囲とのコミュニケーションを通じて症状が改善していく効果もある。
みんなでアドバイスしあい、良いアイディアを最後にロープレした。
アイディアなど、周りからの意見は終始ポジティブなことが多く、お互いを励ます気持ちでいっぱいだった。
笑いも多く、軽やかに話されている。

当事者の方々に話を聞くと、みんな当事者研究が大好きとのこと。
自分のことをよく知れることにわくわくされていた。

【べてるの仕事とは?】
昆布詰め、刺繍、さをり織りなど。他にも色々ある。
べてるのルールを守りながら行うので、「手より口を動かすこと!」、自分に合わせて適度にサボられていた。
自分の悩みを終始話され、周囲が聞いたりアドバイスされていた。
ただ、利用者が売り上げについてもモチベーション高く、主体的にコミットしていて、良いサボり方とのバランスが絶妙だった。
まあ…
色々問題は日々起きるけど、
「それで順調!」
まさに、その通り!!

【自分まとめ】
以前は、作業所は知的障害のある方々のが好きだった。その方にあったサポートを考えるのがわくわくするから。
精神障害のある方々の作業所では、向き合うことに心をすり減らし病んでしまう支援者の話をよく聞いていたので、自分がもし将来関わるとしたらどうなるんだろうと、少し心配だなあと勝手な妄想をしていた。
でも今、べてるに行って、精神障害のある方々の作業所も好きになった。利用者さんたちも、そして自分自身も、お互い自分の中の気持ちとの葛藤を頑張って言語化していき、笑い飛ばしながら、一緒に成長しながらつくり上げるということに魅力を感られるようになった。
自分の中の勝手な偏見が壊れた瞬間だった。

当事者主体の徹底はすごかった。
当事者がべてるの見学対応をしたり、積極的に営業や、寄付を募ったりしていた。
自分たちのべてる。自分たちでつくりあげているもの、とっても誇らしいもの。というのがひしひしと伝わって来た。

また、「グループホームから作業所までは、自転車が好きなんだよ。自由に休憩したり、寄り道したり、自分のペースで行けるから。送迎は、乗せられてるって感じでなんともなあ…」とおっしゃったおじいちゃん。
そ、そうだよね!本当にそうだよね。
なんとも、すごく、好きだ。

作業所では、おばちゃんに、べてるの家で一番良かったことは?と聞いたら、
・「毎日毎日当事者研究で自分のことがよく分かること」(人のことはよくわかるのに、自分のことって一番分からないでしょ〜と。)
・「自分を大切にするとはどうゆうことか分かってきたこと」
・「自分じゃ気づけない可能性に気づくことができたこと」
とおっしゃった。
家庭環境もあり、専業主婦だったこともあり、精神疾患もあり…自分が働くことができるとは想像もしなかったとのこと。
その可能性に、向谷地さんが気づかせてくれたとのこと。
そのおばちゃんに、私がなぜか「久しぶりに、話しやすい人が来てくれて嬉しいわ〜!あたし、あんた、好きよ〜」と、気に入ってもらえたこと、色んな面倒を見てもらって自分のおばあちゃんみたいな感覚になって、心があったかくなった。
でも、「あんた、その歳でそんなに落ち着いちゃって、不思議だねえ。人生苦労したんだねえ…色々あったんでしょう…」と勝手に心配してもらったこと。笑
おばちゃんは、べてる歴8年くらいで、毎日当事者研究をしてるし、べてるの理念も染みついているので、べてるを体現している方だった。
自分の弱さを受け入れ、人に相談しつつ自分も人にアドバイスするのが好き。
私はまだまだ自己覚知が足りないし、自分のこともまだまだ知らないんだなあ…と気付かされたのでした。

「また来なさいよ〜」と何度も言われたので、きっとまた行くんだと思います。

べてるはすごい、理想郷。
でも、それだけじゃダメなんだと思う。
べてるの理念がどんな形を変えても、東京にないといけないんだ。そう思った。
自分の日々の実践に、必ず生かしていこう。