旅をする知

ソーシャルワーカーとして、旅をするように学ぶ。それは形を変えても生き続ける。

障害のある子の虫歯、発見したらどうする?


障害者歯科学会に参加。
最近はいろんな場面で、自閉や知的障害のある子の虫歯の多さが気になっていた。
こんな凄まじい虫歯、本当に存在するのか!ってゆう光景が目の前の口の中に。
一般的にも、感覚の敏感さによる歯磨きの拒否や、行動問題の激しさによる仕上げ磨きの難しさ、歯並びの悪さ、ネグレクトされたままなど…虫歯になりやすい要因がたくさんある。
まじで放置はできない。
何かできないかなぁと、モヤモヤしてたところに、偶然にもこの学会に参加でき、たくさん具体的実践につながるお土産ができた。

頭ん中はまだメチャメチャだし、専門分野ではないので間違った理解をしている可能性はあるが、とりあえず恐れず振り返りメモ。

・子どもの問題行動が、実は親知らずや虫歯などが原因なことも。
障害のある子は、「いたい!助けて!」が言えないので、暴れたり、叫んだり、夜も眠れなかったり。
口の中を気にしてる、なんかモグモグしてる…など、日頃の枠にとらわれない観察が本当に重要なんだなあと。
これ、何も知らない人だったら、この情報だけで、精神科で薬をもらうだけなんてこともあるんじゃないか?
改めて、知ってるのが心理や教育だけじゃだめだなあと。もっと多様な分野を知り、全体を見てつなげなくては。

・その人なりの健康感を育むことの重要性
「その人がどんな生き方をするのか・選んでいくのか、誰が支えていくのか」を総合的に考えて。
健康(身体・精神・社会的にも)になったら、もっと心が豊かになるし、幸せだよね!という共通認識をもてるかどうか。
抽象的な健康や清潔さの理解は知的障害のある方にとってはハードな場合があるが、予防に力を入れていくためには工夫し続けていくこと。

・行動変容法による、歯科治療の第一歩を目指す実践について。
歯科での行動変容法についての基礎や応用の具体例が理解でき、今後子どもたちを安心して障害者歯科につなげられるイメージができたこと。(診察台に上がることすら怖くて泣きすぎて嘔吐したり、身体拘束によるストレス、PTSDやトラウマになることを避けたいので)
歯科でもスモールステップはこんなところからはじめてもいいんだ!(挨拶して帰るだけ)とか、こまめなモデリングや視覚支援、少しの変化をしっかり褒めて自身につなげ、主体的な歯磨きにつなげるところとか。
時には、ネグレクト受けてた子や統合失調症の引きこもりの人の自信や社会参加の一歩になりやすい環境でもあるんだとか。

・やはり、家庭環境の把握や地域連携は歯科でも重要。
治療は上手くいっても、その後のケアが継続できるのか。
そもそも、お母さんが歯磨きしてなかったら、まずはお母さんから!なんてことも。磨かないことが文化の家庭もある。だから、根本的なニーズやお互いのビジョンの共有も大事。
「お母さんも、美味しいものを美味しく食べたいですよね。お子さんも一緒ですよね。」なんてとこからの。
現状だと忙しすぎる歯科衛生士さんだが、ソーシャルワーカーのような役割を徐々に拡大しつつあり、さらにニーズが増えていく。

・歯科医さん衛生士さん、やはり主観と客観的な事実を普段から分けられているので、話すときも、「ここからは私の推測なんだけど…」と、はっきり言ってから考えを述べられてたことがすごく自己反省になった。
また、常に納得できる根拠やデータをもとに話を進めるのは、福祉としてもっと見習わねば。
自分がいかに普段から主観的な判断と思い込みで動いているかに気づけました。

・権利擁護、合理的配慮、自己決定について、シンポジウムで改めて考えた。
治療の説明と理解と同意を得ることの難しさ。
愚行権(他者から見て愚かな行動も本人の自由)と絡めて考えだすと、もう、頭ん中ぐるぐるだわ。
本人の最善の利益とは何か。
それについては、今後もたくさん考え続けなければならないのだ。
全体でのトークで、会場にいた歯科医師さんたちは、正解がないことだし、自分の考えを表明できない人は多いと思いきや、みんな批判を恐れず、色んな立場・角度から意見をたくさん出されていた。
なんか、感動した。
専門家たちが100人以上いる中で、堂々と多様に議論しあえるって、素敵!しかも、それぞれの考えが柔軟。
福祉・ソーシャルワークとはまた違い、もちろん医学的な視点が多かったが、すんごく勉強になった。
結局、ラポール(信頼関係)形成と、通い続けてもらえるようなところからのスタートにはどこの業種にも違いはない。
今後、本人の短期的な、「今は怖いから治療したくない!」と、長期的な「美味しいものを美味しく食べたい!」などの願いは、どのように調整されるべきなのか…。対話し続けよう。

最後に、
行動面激しかったり、ネグレクト家庭や過酷な環境にいて歯磨き文化が疎かだったとしても、歯や健康は諦めちゃいけないと思う。
「お母さん、大変ですよね…」の寄り添いや控えめな提案のみで終了にならないように。
なぜなら、そもそも、健康である権利や機会を提供されていなかったのは、社会の責任。
予防をしてこなかったのも社会の責任。
通園、デイサービス、就労施設、相談支援でもできることはいっぱいある。
安心できる障害者歯科の紹介だけでなく、
捕食、生活リズム、食事やおやつ後の仕上げ磨き、フッ素を使って歯を守ること、口をゆすぐだけでも。
もちろん、家庭や学校と連携し、お互い励まし合いながら。

もっと学ぼう、観察しよう、実践しよう。